2010年11月14日

特許権、実用新案権、著作権

特許権、実用新案権、著作権などの場合は並行輸入は許されません。

ところで、特許権、実用新案権、意匠権についても、工業所有権が各国各国で成立することから同様に問題となります。

しかし商標の場合と違って、これらの権利の根拠は、その国で発明などを公開したことに対する代償として、その国での独占権を認められたのですから、各国で報償を得ることができ、結論は異なるとされています。

つまり、真正商品の並行輸入は国内の特許権などを害するので許されないとされています。


★特許品のケース
特許については、パーカー事件の直前に、同じ裁判所で、特許品の並行輸入が違法である旨の判決がありました。

オーストラリアでも日本でも特許権を持っているB社の子会社が、オーストラリァでボーリングのピン・セッターの機械を作り販売しました。

ところが、その特許機械の中古品が香港から日本に輸入され、その機械の使用老をB社が訴えたという事件です。

この場合、日本の特許権の侵害になるので許されないという判決がなされています。

なお、EC諸国間では、域内流通の自由という別の原理から、条約により特許品についても、並行輸入が許されています。


★著作権の場合
著作権については、あまりわが国では事件として取り上げられていませんが、主要国では、商標と同じでなく、特許と同じであるとされています。

つまり、真正商品の並行輸入が、著作権を害するので、並行輸入は許されないとされています。



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2010年11月13日

商標権を害さない場合(本物の輸入品)

本物なら、どんなものでも並行輸入できるとはいえません。

並行輸入が認められるのは、その真正商品の並行輸入が、国内の商標権を害さないからなのです。

ですから、大蔵省の通達でも、商標品の並行輸入の際に日本での商標権者・専用使用権者と、外国での商標権老が経済的・法的関係で別人である場合、並行輸入は許されないとされています。

また、製品によって「品質」に違いがある場合などに並行輸入は許されないとされています。

アメリカの有名な石鹸会社であるLUX社とスイスのLUX社とは、かつては資本関係がありましたが、現在は「関係」がありません。

ですから、アメリカのLUX石鹸のスイスへの無断輸入は、スイス商標権の侵害になるとされました。


★真正商品でない場合
スイスA社の子会社が、B商標用に韓国に輸出した時計部品カミ組み立てられ、香港でA商標が入れられてわが国に輸入されました。

いくらムーブメントがA社の本物であっても、このような商品は真正商品ではありません(東京高裁昭和56年12月22日判決)。

真正商品問題も複雑な様相を呈してきており、アメリカでもグレーマーケット問題として転換期に差し掛かっています。

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2010年11月12日

並行輸入は禁止されていた

かつては、このような場合、S社はパーカー社自体も商標を使用できない日本における商標専用使用権を持っているとして、N社の商品輸入は、S社の専用使用権侵害になるとしていました。

税関でも関税定率法21条1項4号にもとついて、S社などの商標専用使用権者が輸入差止申告をしたときには、商品が本物でも輸入を差し止めていました。

しかし、裁判所は、ついに並行輸入は商標法に違反しないとしました(大阪地裁昭和45年2月27日判決)。


★商標権侵害にならない理由
パーカー万年筆の並行輸入の事案が、商標権の侵害にならないとされた理由は、商標権侵害の本質は商標の機能を害することにあるが、パーカーという商標はS社でなくパーカー社の商標として知られており、N社の本物のパーカー万年筆の並行輸入を認めても、パーカー商標の商標機能を損なうことはないということを理由にしています。

N社は、パーカー万年筆の輸入差止めをしていた税関に対する、輸入差止めという行政処分の取消しを求める行政訴訟も、前記の民事訴訟のほかに起こしていました。

この行政訴訟のほうは、民事訴訟が前記のような結果になったので、税関が差止めを解除して商品は通関され、目的を達したN社が訴えを取り下げて解決しました。

先進工業国でも理由と条件は異なりますが、真正商品の並行輸入を認めるのが、世界的傾向でもあり、税関の上級官庁の大蔵省も、昭和47年8月25日の通達で、国内商標権者と同一人と見なされるような者が適法に商標を付した、品質的に同等な真正商品の並行輸入を認めることにしました。

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2010年11月11日

国ごとに成立する商標権

特許などの工業所有権には、まだ国際特許というような特許はなく、宣伝で国際特許といっているのは、多くの国で特許をとっていることを、そのように表現しているにすぎません。

商標権もその国その国において、独立して成立するものです。


★商標専用使用権者がいる国内に本物を輸入
ところで、パーカー社はアメリカで「パーカー」という商標で万年筆を製造し世界各国で販売しており、日本でも有名な「パーカー」標章に商標権をもっています。

そして、カナダのS社に日本における商標専用使用権を与え、同社は輸入総代理店として日本でパーカー万年筆の販売を一手におこなっていました。

ところが、日本のN社が、パーカー社の香港代理店から、パーカー商標を適法に付した本物のパーカー万年筆を輸入し、日本で売ろうとしました。

これが真正商品の並行輸入の問題です。

この場合、N社が輸入した万年筆が偽造品であるとか、下請の横流し品であるときには、日本におけるS社の商標専用使用権の侵害となることは明らかです。

ところが、N社が輸入したのが、パーカー社が商標をつけた本物の商品なので、問題が生ずるのです。

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2010年11月10日

パリ同盟条約加盟国民

ところで、発明をしたとき同時に各国へ出願をすることは不可能ですが、工業所有権保護についてのパリ同盟条約がこの問題を解決しています。

この条約には、現在約90力国、世界の主要国はほとんど加入しています。

その条約の中で、特許・実用新案では第1出願をした日から12ヵ月、意匠・商標では6ヵ月の出願猶予期間(第1出願日に出願したものとみなされる優先期間)を認めています。

たとえば、1985年1月8日に日本の特許庁(正確には、加盟国のいずれかの該当官庁)に出願すれば、後にアメリカや西ドイツの特許庁に出願猶予期間内である1985年5月8日に出願しても、遡って1月8日に出願したものとみなしてもらうことができます。

また、同盟国民には、内外国人平等の原則により、その国の国民と同じ待遇で登録手続がとられることになっています。


★外国出願の代理人
外国出願の場合、通常どこの国でも、その国に居住する人を代理人としなければならないとしています。

そこで、自分で直接出願できませんが、日本で出願を依頼した特許事務所に頼めば、たいてい主要外国の特許事務所と連絡がありますので、その事務所と連絡し、外国弁理士・特許弁護士を通じて、その外国出願の手続をしてくれます。

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2010年11月09日

商標権の発生条件

次に、西ドイツ、フランス、わが国のように商標権が登録によって生ずる国(登録主義)と、アメリカ、イギリスのように商標権が商標の実際の使用によって生ずる国(使用主義)があります。

アメリカも、1988年11月16日、商標法改正令に大統領が署名し(1989年11月16日効力発生)、使用意思だけで出願を認めるようにしました。

しかし、使用主義の国も、登録後一定期間の使用に争いがないと、以後商標登録を無効にできないというようにして、登録主義の権利安定の長所を取り入れています。

反対に、登録主義の国でも、商標を一定期間使用しないと登録取消原因にするなど商標使用を強制して、使用主義の長所を取り入れています。


★海外活動には外国商標登録が必要
ところで、商標は、商標商品を購入をする消費者にも関係しますから、先進工業国・開発途上国を問わず、消費者保護法で各種の規制をし始めています。

ですから、商品輸出には、商標法だけでなく、消費者保護法の調査も必要です。

外国へ継続的に商品輸出をしたり、販売特約店を設けたりする企業は、特許出願以上に、商標出願を各国にせねばなりません。

なぜなら、特許出願を怠っていても特定技術を独占できないだけで商品販売はできますが、商標の調査・準備をしないと外国商標に抵触し商品販売の差止めをうける危険があるからです。

外国へ出願をする場合、出願書類を翻訳したり、法人格証明をしたり、手続に時間がかかり、国内出願のように早くゆきません。

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2010年11月08日

特許出願について

ところで、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、ソ連のように特許出願について、内容の審査をする国(審査国)と、イタリアや1968年までのフランスのように審査をしない国(無審査国)があります。

審査国と無審査国の特許は入学試験のある学校と無試験の学校のように大違いです。

また、審査国といっても、イギリスのように新規性の審査のみをする国、アメリカ、西ドイツのように進歩性も審査する国など審査の内容・程度はいろいろです。

さらに、西ドイツ、イギリス、フランスのように先に出願をしたものに特許権を与える国(先出願優先主義)と、アメリカのように先に発明したものに特許権を与える国(先発明優先主義)などと、その制度はいろいろです。


★出願の条件の違い
商標では、その国で実際に商標使用をしていることを出願の条件としている国と、西ドイツ、イギリス、わが国を始め、ほとんどの国のように、使用意思だけで出願を認める国とがあります。

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2010年11月07日

各国の特許制度

現在では、開発途上国のうちでも特に遅れた国とか、一部少数の例外を除いて、ほとんどの国に何らかの形で工業所有権制度があります。

そして、主要国では外国人の出願も大体認めています。

共産圏の諸国も大体特許制度を持っています。

ソ連は出願数で、アメリカ、日本につぎ、西ドイツ、イギリス、フランス以上の特許大国です。

中国も1984年(昭和59年)4月に特許法を公布しました。

ASEAN諸国も工業所有権法を持っています。

ただ、インドネシアのように、商標法は持っているが、特許法は制定準備中という国もあります。

なお、韓国については、戦後しばらく日本からの出願を認めていませんでしたが、昭和43年に商標についてのみ日本からの出願が認められるようになり、昭和48年には、特許権および実用新案権の相互保護に関する取決めについての合意が成立し、昭和49年から、日本から特許・実用新案出願ができるようになりました。

工業所有権制度の内容は国によってちがっています。

日本や西ドイツのように特許の他に実用新案制度を持っている国は少ないのです。

一般には、その区別がなく特許だけの国(英、米、仏など)のほうが多いのです。

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2010年11月06日

問題著作権法

問題著作権法違反の刑事事件は親告罪となっています。

著作権の使用許諾を受けただけの者は告訴権者ではありません。

通説的に著作権者だけが告訴ができます。

これを誤ると侵害者は無罪になります。

侵害老を知ってから6ヵ月内という告訴期間もありますし、さらに、著作権法の解釈を誤ると謳告罪(刑事処分などを受けさせる目的で虚偽の申告をする罪)として逆反撃される問題もありますから、法律的問題の多い知的所有権違反事件の告訴は、知的所有権に理解のある弁護士に依頼されることを薦めます。


★国ごとに権利をとらなくてはいけない
特許権などの工業所有権は、国によって制度が異なり、特別の条約がなければ、その国の中でのみ効力を持っているにすぎません。

理想は別として、現在では、「世界特許」とか「国際特許」などはありません。

商品の広告などで国際特許などと宣伝しているのは、多くの国で特許を取っていることを、便宜的に国際特許と表現して宣伝しているに過ぎません。

自社の開発した発明・意匠や、商標などの工業所有権を外国で保護し、無断盗用だと主張するためには、関係国に工業所有権の出願をして、その国の権利をとっておかなければなりません。

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2010年11月04日

偽造事件の処罰

工業所有権侵害事件については、告訴者は権利侵害であると主張し、侵害しているといわれる者は侵害でないと主張するような、権利範囲に属するかどうかが問題となる性質の事件と、侵害者が工業所有権侵害であることを承知の上で行なっている偽造事件があります。

かつては、後者の不正商品事件でも、侵害者は罰金に処せられるくらいでしたが、最近は懲役刑が選択され、ときには初犯から執行猶予の付かない実刑も課せられるようになってきました。

国際的にも、偽造防止の団体ができたり、国際会議が開かれたりしてきています。


★文化庁での斡旋と裁判所での調停
著作権侵害に対する救済は、差止請求、損害賠償請求などで、工業所有権侵害の場合と権利の効力・対抗手段においてほとんど変わりはありません。

ただ、著作権の紛争解決手続には、文化庁での「斡旋」の規定があります。

紛争の場合、裁判所での民事調停と文化庁での斡旋のいずれかを選択できます。

両者の違いは、それを行なう所と人の差があることです。

調停は各地の裁判所で行なわれています。

斡旋は文化庁で定める場所で行なわれます。

調停は民間人やときには弁護士から選任された調停委員がこれにあたり、常置のものです。

調停は知的所有権紛争を前提に置いていませんので知的所有権に理解のある委員によって調停がなされるかどうかが問題です。

著作権法上の斡旋委員は常置のものでなく、文化庁長官が事件ごとに学識経験者から委嘱しています。

いずれも訴訟のように強制解決をする機関ではありません。

協議がうまく進まない場合は、知的所有権に理解のある弁護士に依頼して、仮処分手続や訴訟手続をとってもらうことになります。

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2010年11月03日

権利を侵害された者の告訴が必要です

商標権の侵害以外については、親告罪となっており、権利を侵害された者の告訴がなければ犯罪捜査もなく、罰せられません。

告訴があった場合に、その告訴がどう処理されているかの事実調査や統計調査を前提にしないで、検察・警察が、特許権、著作権侵害などを野放しにしているという非難は正確ではありません。

告訴をしなければ取り上げないことは当然であるし、逆に、告訴人に告訴権限がなければ、告訴が無効になり不起訴ないし無罪となるのです。


★著作権の独占的使用許諾を受けた者の権利

著作権法には許諾の規定はありますが、専用実施権・専用使用権制度はありません。

そして、著作権者だけに差止請求権があります。

ですから、通説では著作権者のみに告訴権限があるとされています。

そうすると、著作権契約の実際にはイクスクルーシブ・ライセンス契約・独占的使用許諾契約がありますが(b94)、実定法上は、イクスクルーシブ・ライセンスは限定的な著作権の一部譲渡であるとでも法律構成をしない限り、ライセンシーには差止請求権とか告訴権がありません。

ですから、このことは、実務上極めて注意を要します。

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2010年11月02日

故意の侵害には懲役刑

故意に特許権・商標権を侵害し、検察庁により裁判所に起訴された老は、5年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられることになっています。

実用新案権・意匠権を侵害した者は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

ちなみに、不正競争防止法違反は3年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられます。

専用実施権(専用使用権)がある場合に、専用実施権を侵害した者も同様です。


★告訴をして処罰を求める
民事訴訟では実効のない、故意のある極めて悪質な侵害者に対しては、告訴をして処罰を求めることも考えられます。

なお、商標法は公益も保護しているので、告訴がなくても事件が取り上げられることがあります。

不正競争防止法違反事件も同様です。

最近不正商品問題では、警察は告訴がなくても犯罪捜査をするまでになっており、わが国の知的所有権保護i意識も高くなってきました。

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2010年11月01日

権利の範囲、職務発明、先実施権

被告としては、このような無効主張でなく、同じことのようですが、原告が特許発明を出願する前に、これこれの公知技術があり、特許請求の範囲の解釈は公知技術を前提として、このように狭く解釈すべきで、そうすると、自分のやっているものは原告の権利範囲に属しないといって争うことになります(たとえば、最高裁昭和37年12月7日判決)。

その他の意味のある抗弁としては、発明の実施品が相手方の権利範囲に属するが、特許権者は元の従業員・役員で、こちらの会社には職務発明(b96)による通常実施権があるとか、相手の特許等の出願前から相手と関係なくすでに当該製品を作っていたという先使用による通常実施権があるなどと主張し、これを立証すればよいのです。

法定実施権があれば、相手になんら断わらず実施しても、実施は適法だからです。


★無効審判と訴訟手続の中止
なお、特許法などでは必要があると認めるときは、裁判所は特許庁での審判の結果が出るまで、訴訟手続を中止することができることになっています。

しかし、無効審決が確定していなくても、すでに無効審決が一度出されているとか、これに等しいよほど無効の明らかな事由のあるとき以外は、裁判所は訴訟手続を中止していないのが実状です。

なぜなら、特許庁での無効審判は、その滞貨等で解決が著しく遅れ、審決に対する不服申立てなどを考慮すれぽ10年以上もかかることがあります。

その間に権利は期間満了となって差止請求はできなくなります。

といって損害賠償請求は立証などが困難で、権利者の救済として不十分ですから、訴訟手続を中止することは、原告の事実上の敗訴になってしまうので無効審判の申立てだけで中止しないのです。

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2010年10月31日

審判請求の期間

ところで、外国頒布文献に載っていたことを無効の理由とするときは、特許・意匠については登録日から5年、実用新案は3年をすぎると、審判請求ができないことになっていましたが、技術が世界化してきたことから削除され、この制限はなくなりました。

商標では、先にされた登録との商標類似など公益のあまり関係しない無効原因については、登録日から5年をすぎると、審判請求ができなくなります。

商標権の安定をはかるためです。


訴訟での有効な抗弁
無効審判を請求しても、無効審決が確定するまでは、権利は権利として存在します。

そして、わが国の裁判所と特許庁の役割分担では、アメリカなどと異なり裁判所は特許の無効を宣言しません。

他方、訴訟で権利者から差止めや損害賠償を請求してくれぽ、被告としては、いくら権利が無効であるということが明白であると信じていても、事件自体は受けて立ち、有効な抗弁を主張するより仕方ありません。

そのとき、訴えた原告の特許発明は公知のもので特許は無効である、とだけ主張しても意味がありません。

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2010年10月30日

判定結果に従わないときは訴訟

しかし、相手が判定の結果を待って処理しようという他方の申出を承知しなければ、紛争解決方法にはなりません。

判定の結果に従うという約束のない場合で、一方が判定の結果に承服しないときには、訴訟で争わざるをえません。

判定請求中であるということは、相手方にも裁判所にも解決を待ってもらう理由になりません。

このように判定は完全な紛争解決手段ではありません。

しかし、判定は客観的な第三者の、しかも専門官庁の判断として重要です。


★特許庁に審判を請求する
無効審判というのは、たとえば、相手の発明などが出願前から雑誌・パンフレットなどにも載っているというような、発明の新規性を欠く場合など、つまり、積極的特許要件がなかったり、消極的特許要件があるとき、特許庁に対し審判を請求して、権利を無効にしてもらう手続です。

無効審判は、特許要件を欠き、あるいは、特許障害があるなど本来無効なのに登録になっているというときに請求するもので、権利の消滅後でもすることができます。

それは、損害賠償請求などでは、権利消滅後も有効・無効が関係してくるからです。

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2010年10月29日

判定の性格

この判定という判断の法的性格は、特許庁という国家機関の行為ではありますが、一種の鑑定であり、国民に対するサービスであって、行政処分ではありません。

ですから、その結果に対して不服申立てをして争うような性格のものでもなく、自分に不利な判断が下されても不服申立ての方法はありません。

また、特許庁の判定での判断と特許訴訟・商標訴訟における裁判所の判断が必ずしも一致するとは限らないので、判定の結果が絶対とはいえません。

しかし、判定は客観的な第三者の、しかも専門官庁の判断として権威のあるものです。


★紛争解決方法としての判定
警告をした者と警告を受けた者の間に権利範囲の解釈に大きな相異があることがあります。

このようなとき、当事者の主観的判断でなく、専門官庁に公的な判定をしてもらい、判定の結論にしたがって侵害問題を処理しようとする考えも、工業所有権紛争の解決方法の1つといえます。

現在、この判定も2ヵ月や3ヵ月で下されず、より長期を必要とします。

しかし、審判や訴訟は、より時間がかかり費用もかかるので判定を請求し、判定の結果を待ってそれにより紛争を処理しようという考えもできます。

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2010年10月28日

権利の範囲・効力

特許侵害かどうか、商標侵害かどうかが争われるとき、権利者と侵害しているといわれる者の間で、一一番意見の食い違うことの多い点は、侵害しているといわれる者の製造ないし販売している商品、侵害の対象物が、問題となっている権利の範囲に入るか、権利の効力が及ぶかどうかという問題です。

権利者は、どうしてもその権利の範囲・効力(以下範囲を例にとる)を広く考えがちですし、その反対に、侵害といわれている者は、権利の範囲を狭く考えがちです。


★特許庁に判定してもらう
権利者から警告をうけたときに、相手が権利の侵害であると主張する自分の製品・対象物が、相手の権利範囲に属するものかどうかを、専門機関であり、かつ、公平な機関である特許庁に判定してもらう制度があります。

反対に、相手が当方の権利の範囲に属さない、当方の権利の侵害でないと主張する場合に、相手の製品・対象物が、当方の権利範囲に属さないものかどうか特許庁に判定してもらうこともできます。

前者は消極的な判定請求であり、後者は積極的な判定請求です。

判定請求をすると、特許庁は相手方に反論の機会を与えたうえで判断をすることになっています。

法律的には、相手方がない場合に、相手方を表示せずに単独で判定請求をすることもできます。

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2010年10月27日

損害賠償請求

損害賠償の請求ができるのは、権利登録後が原則ですが、法改正で特許・実用新案について、公告(⇒32)後、直ちに損害賠償の請求ができるようになりました。

しかし、公開後出願公告前の模倣行為については、損害賠償請求はできず、実施料相当額の補償金がとれるだけです。



★謝罪広告を請求できる場合
どのようなときに謝罪広告を請求する訴えができるかですが、権利者は、損害賠償請求と一緒に、あるいは損害賠償請求の替わりに、新聞雑誌などに謝罪広告をすることを請求できます。

しかし、そのためには単に侵害や損害の生じたことの立証だけでは足りません。

業務上の信用を害されたことの立証が必要です。

たとえば、粗悪な類似品が売られたため多くの苦情がきたというような場合がこれに当たります。


★実務は謝罪
広告にやや厳しいですから、安易に謝罪広告をしろということはできません。

特に、不必要に侵害者に屈辱的な謝罪文句を広告することを要求することはできません。

現在の実務の傾向は謝罪広告を認めることに、やや厳しいようです。

しかし、損害賠償がいろいろな理論的難点から小額しか与えられていない現状からも、現状回復のために、もっと信用回復措置が用いられてもよいかも知れません。

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2010年10月26日

差止請求訴訟と損害賠償請求訴訟

差止請求訴訟は、権利者および専用実施権者(および一部の判例によると独占的通常実施権者)ができます。

差止請求の他に損害賠償の請求をすることもできます。

損害賠償請求訴訟は、普通は差止請求訴訟と一緒になされています。

ただ、そうすると故意・過失、行為と損害の因果関係、損害額などの審理の分だけ、訴訟が長くなります。

損害賠償についての審理は、権利侵害についての審理に負けないくらい立証が厄介なので、差止請求訴訟だけを先にやって、あとから損害賠償請求の訴訟をするという場合もあります。


★故意・過失の証明と推定
損害賠償を請求するためには、差止請求とちがって、相手方に故意または過失のあったことを主張・立証することが必要です。

しかし、外形的な侵害行為をした者は、法律の規定によって過失があったと推定されるので、侵害者の方で無過失を立証しない限り、損害賠償義務を免れることはできません。

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2010年10月25日

仮処分手続と本訴手続

知的所有権の侵害に対する訴訟手続には、仮処分手続と本訴手続があります。

仮処分は、一応の手続ですから、最終的結着のためには、本訴訟(一般に本訴という)を起こすことが必要です。

本訴は、三審制度がとられています。

知的所有権の権利侵害に関する本訴は、地方裁判所(「訴額」が90万円を越えない事件は簡易裁判所)で審理されますが、東京地方裁判所、大阪地方裁判所、京都地方裁判所、神戸地方裁判所、名古屋地方裁判所などには、知的所有権の専門部がおかれています。


★証拠保全
権利侵害訴訟では、本訴に先立って証拠保全がなされることがあります。

証拠保全というのは、事件の重要な証人が病気で死にそうだから今のうちに証人尋問をする必要があるとか、帳簿の保存期間がきて廃棄されそうだなど、将来本訴で、その証拠を使うことが困難になるというような事情があるときに行なわれる手続です。

証拠保全は決定にもとづき、裁判官と書記官が当事者立会いのもとに行ないますが、相手方が拒絶すればできないという欠点をもっています。

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